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ランドセル屋さんの革製品ブログ

月白の鹿革ブックカバーに、
谷崎潤一郎『文章読本』

2019年9月20日

ブックカバー

皆様こんにちは。

8月30日に「いつの間にか稲穂が」と画像をお見せしてから20日が過ぎました。本日はすでに「頭を垂れる稲穂」が黄金色になりつつあります。機が熟している感じがして、感慨深いです。

鞄工房山本の、18色の鹿革でお作りしているブックカバー。それぞれの色に合わせて文庫本を選び、一緒にプレゼントするという新しいギフトアイデアの提案が〈ディア文庫〉です。
今回ついに最終回、18色目、18回目です。ふう。ちなみに、2度ほど複数の本をご紹介しましたので、18冊目ではありません。

月白の鹿革ブックカバーに、まっさらな、これ

罫線もなにもない、A6判のノート。
いきなり怒られそうですが。ブックカバーといってもブックだけをカバーする義理は無いので、ノートカバーにもなりますよ、ということです。とくに、芯材がはいっているので、ノートを手に持ったまま記入するときにいい硬さです。
もちろん、月白は真っ白なだけに他の濃い色よりも汚れやすいので、私のような粗忽者がノートカバーにするとすぐに汚してしまいそうですが。白や、薄い色のものをいつもキレイに使っている人って憧れでもあります。

(南浦町では9月に入ると彼岸花があちこちに咲いています)

鹿革ブックカバーは、以前こういう使い方もご紹介しました。

ほぼ日手帳さんではA6の手帳も販売されています。それが鹿革ブックカバーにぴったりなのです。

それはそうとして、18回目のディア文庫でおすすめするのはこの本です。

谷崎潤一郎 文章読本

この文庫本の表紙も好きです。

〈ディア文庫〉ではできるだけ幅広い分野の本を取り上げようとしてきました。もちろん仕事ですから、好き勝手に書いているわけではございません!
もし個人的な趣味で選ぶならば、日本語の美しさを味わえるような本だけを集めたかったものの、それだけが著作の価値というわけでも無ければ、それだけで幅広い読者に興味を持っていただけるわけでもありません。 ただし、日本語の本をご紹介するからにはやはり日本語の美しさも気になり……。

そこで最終回に、谷崎潤一郎の『文章読本』。少々驚きですが、こんな著名な作家が平たく言うと〈HOW TO 本〉、文章を書けるようになるための、小説家になるための本を出しているのです。

谷崎潤一郎(1886年(明治19年)7月24日 - 1965年(昭和40年)7月30日)は『痴人の愛』『細雪』などで知られています。このブログでも、鹿革18色のうち憲法黒を取り上げた際に『陰翳礼讃』の一部に触れたことがあります。

私は10代の頃、いかにも淫美なタイトルが付けられているため、彼の作品は食わず嫌いと言うか「オトナの本」として謎の敬遠をしていました。その後、まずは『陰翳礼讃』から入り、『美食倶楽部』などの短編を経て『細雪』を読みました。

私もこのブログで関西弁の会話を書くのが好きだったのですが(一緒にするな! との、お叱りは置いといて)、『細雪』はしっとり、ねっとりとした関西弁(昭和初期の大阪)のひらがなと、彼の使う漢字の混ざり具合が、視覚的にも美しい。視覚的効果にとどまらず、これを読んでいると、大阪弁が標準語よりも音楽的に思えてきます。

(残念ながら非売品の、〈夢こうろ染〉鹿革ブックカバー。月白の鹿革に手でランダムに絵柄を染め付けています。こちらももちろん一点もの)

ここで『文章読本』の話に戻る。前書きで明言されているように、「いろいろの階級の、なるべく多くの人々に読んで貰ふ目的で、通俗を旨として」書かれたものだけあって、「言語・文章とは何か」から始まり、様々な文章——韻文・散文、口語体・和文調・漢文調・和漢混交文、外国語の文章などなど——を紹介し、徐々にそれぞれの文章の良さ、最終的には書くときの心得、と順にわかりやすく説いていきます。

ところが、わかりやすく説明されているからといって、それを実行することが容易くなるわけではありません。というわけで、この本を読むことによって文章が書きたくなるかどうかも分かりません。反対に、怖気づいてしまうこともあるかもしれません。

思うに、この本が良いところは、(文章を書く以前の話で)文章を読むときにより奥深く良さを感じ取れるように、いわば味わい方を教えてくれるところです。それは、今まで知らなかった美味しい料理を発見して、味覚が発達していくきっかけになるような、視界が明るくなるような、嬉しい出来事です。

話すも読むも書くも、日々のこと。今までなんとなく過ごしてきた時間も、ちょっとしたきっかけでより濃密な、思い入れのあるものに変わるかもしれません。

18回に渡ってお送りしてきた〈ディア文庫〉でも、皆様に小さくてもそんなきっかけのきっかけくらいになってお役に立てたのであれば幸いです。

〈鹿革ブックカバー〉18色展開・15,000円(税別・写真は胡桃色)の商品ページはこちらから

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 ヨーロッパで12年間の就業経験を積んだ後帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream