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ランドセル屋さんの革製品ブログ

上質なビジネスバッグと
永く付き合ういくつかのヒント その2:革製品の保管編

2019年6月18日

トートバッグ

皆様こんにちは。鞄工房山本です。不安定な天候が続くこの時期に合わせて、前回は雨にあったときの革製品のお手入れ方法をご紹介しました。

(そういえば少し前に、工房と本店/事務所のある橿原市は晴れても雨でも空がきれい、と書きました。これはつい最近ゲリラ豪雨のあった日の不思議な空模様です)

今回はそれに引き続き、バッグを使用しない時期の保管方法をご説明します。と、いうわけでビジネスバッグ特集15です。

革のバッグを美しく保管する方法

鞄工房山本のビジネスバッグ、もちろん毎日使っていただきたいですが、ビジネスパーソンと同じくビジネスバッグも適度にお休みしたほうが、お仕事で全力を出せます。というわけで、使用しない日にバッグを効果的に休ませる方法をご紹介しましょう。

1. バッグの中身を出す

普段はバッグに荷物を入れっぱなしにされている方が多いかもしれませんが、たまの日には荷物をすっかり出してあげて、バッグの下の方やポケットの中に溜まったゴミ、ホコリをきれいに取り除くようにしましょう。普段目が届かない分、意外なくらい汚れが溜まっているものですよ。

2. 形を整えて、(あれば)アンコをいれる

アンコって聞かれたことはおありでしょうか? 間違えても、小豆をお砂糖と煮込んだアンコのことではありません! って、ご存知ですよね。新聞紙や硬すぎない紙を丸めて、バッグの形状に合わせて形作った詰め物のことをアンコと言います。新聞紙がむき出しだと内装に色移りするかもしれませんので、一番外側は無地の紙にしてください。

(右手の白い物体がアンコです。1つで作らなくても、2つ、3つと分かれても構いません)

高温多湿の環境を革は嫌います。と言っても、乾燥しすぎるのも良くないのですが、日本でこの季節であれば、まずは高温多湿のほうが心配です。バッグのポケットに顆粒の乾燥剤を入れるのも有効なようです。ただし、使用開始後にゼリー状になったり、水分を溜め込むものは厳禁です。それ自体がシミ・変色や革の変質を招くおそれがあります。

革がややパサパサして乾燥しているようなら、皮革用クリームを塗っておくのもいいでしょう。

3. 風通しの良い、直射日光の当たらない場所に置く

空気がこもっていたり、日差しが直接当たったりする環境は革にとって過酷です。湿気が原因でカビが生えたり、長く日光にさらされて退色したり、過度に乾燥してパリパリになったりしてしまいます。バッグを保管する際はできるだけ「風通しの良い、直射日光の当たらない場所」に置いてあげてください。

また、バッグをクローゼットなどへ長期間保管する場合は、不織布や布の袋に入れておくことをおすすめします。なぜかと言うと、クローゼットに革のバッグを保管する場合、他にもきっといろいろなものが入っています。誤ってバッグを引っ掻いたり、キズがついたりしないとは限りません。袋に入れておけば、そんな事故から大切なバッグを守ることができます。

ただし、絶対の絶対に、バッグをビニール袋には入れないでください。空気がこもってしまい、革の変質を招くだけでなく、高温多湿の環境ではコバに塗ったニスが溶けて他の部分を汚してしまうことさえあります。
(わたしはコバ同士がくっついた可哀想な事例を見たことがあります。ビニール袋保管がキライなのは、エナメルの革だけではないのです)

ただし、布の袋に入れたとしても、たまにはクローゼットから出して湿気を飛ばしてあげることをお忘れなく。そのときも、風通しの良い直射日光のあたらないところに置くようにしてください。

4. 保管時は「アタリ」がつかないように

保管時にお気をつけいただきたいもう一つのこと。それが「アタリ」です。

革に何らかのものが押し付けられて付いてしまった跡のことを「アタリ」といいます。鞄工房山本のビジネストートに関して特にお気をつけいただきたいのはこちらです。この持ち手、パタンと倒せば省スペース、なのですが、倒したまま本体と触れた状態で力がかかると、持ち手の跡が胴に描かれてしまいます。こんなふうに。

笑顔はどなたも素敵に見せますが、ここはご遠慮いただきたい。というわけで、どうしても持ち手を倒して収納したい場合は、厚紙を持ち手と本体の間に挟むことをおすすめします。厚紙自体のアタリがつかないよう、固さやサイズも念の為お気を付けください。

一番確実なのは、持ち手を立てたまま保管することです。スペースの都合で持ち手を倒される場合は、くれぐれもお気を付けください!

ひと手間かけて、時間も日常もこころ豊かに過ごすことと、革製品の関係

いかがでしょうか。「そんなん面倒くさいわ~」、と思われたら……そのひと手間を楽しんでみるのはいかがでしょう。
手間のかかることにはそれなりに理由がある。手編みのセーターは美しくて温かい、都度挽く豆で入れたコーヒーはおいしい、顆粒だしじゃなくていりこを一晩水に浸して採ったお出汁のほうがおいしい。あれ、何の話でしたっけ。
えーと。

(農業も、手間をかけてより美味しいものを作るという意味では通じるものが。田植えが行われたばかりの水田に空と雲が映っているのを見るのは最近見つけた楽しみ)

革のバッグのお手入れのプロセスを楽しむようになれば、ご自身のバッグを育てることにもなります。それに実は、購入時の新品の状態よりも、「ちょっと年季の入ったほうが味があってカッコいいバッグ」となるためには、もとよりいい素材を使って、しっかりと作られている必要があります。ここはぜひ、お手入れする値打ちがあると思って、ひと手間かけてみてください。最近頻繁に耳にする革の「エイジング」は、「良い形で」歳を取るということでなければ意味がない。

と、前回のブライドルレザーのお話に続いて、なんだか力説してしまいました。

鞄工房山本 二見

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 京都大学卒業 ヨーロッパで靴の仕事を12年間経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream