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ランドセル屋さんの革製品ブログ

鞄工房山本ビジネスバッグ特集その4(通算第13回):
イングリッシュ・ブライドルレザー

2019年6月10日

トートバッグ

皆様こんにちは。鞄工房山本です。
6/8(土)から店頭で販売を始めたビジネスバッグのBCシリーズ。ビジネスリュック、ビジネストートとマイクロショルダーの3型を、ブライドルレザーとソフト牛革のコンビでご提案しています。

王子の記事と通算で13回目の今回は、最も目に付きやすい特色にスポットを当ててみます。

革好きにはたまらない、イギリス製ブライドルレザー

見た目にも迫力のあるブライドルレザー。白く浮き出た粉(ブルーム= bloom)が印象的です。“bloom”とは(花が咲く、という意味は別に)一般には英語で、葉っぱや果実の表面に出てくる白い粉のことを指します(例えばプラムを思い浮かべてください)。
この革、もともとは馬具の中でも手綱(ブライドル=bridle)用に作られている革なのです。

(Thomas Ware & Sons Ltd. の内部。映画でこういう光景を見たような気もする、強烈な印象をうけます。今回のブログで掲載した画像は全て、同社から使用許可を頂きました)

イギリスはブリストルで1840年に創業した Thomas Ware & Sonsは、イギリス国内で最大の植物なめし革タンナーのひとつです。その昔ながらの製法で作る革の用途は多岐にわたっています:
・靴の本底
・乗馬用品
・工業機械の部品
・高級革小物
など。ここで言う工業用品の部品にはミシンのベルトも含まれています。縫う機械も縫われるものも作っているのですから、面白いですね。

その他、いかにもイギリスらしい用途としては、クリケットのボール用の革や犬のリード用まで幅広く生産しています。
その他、私が心惹かれるのは屋内の床や壁のタイルとしての用途。

画像をみただけでも、この上を歩くと気持ち良さそうです。日本ほど湿度が高いと扱いが難しいのでしょうか。そんな心配をする前に、高そうなので買えるお金がありません。あ、家もありません。

彼らのビジネスの主力は靴の本底用の革のようですが、乗馬用品用レザーもそのクオリティで知られています。

乗馬用品用の革、と一口に言っても、どの用具を作るかによって革の種類が分かれているそうです。中でも「ブライドルレザー」と「サドルレザー」はバッグや革小物にも使われるので耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
サドルは(自転車のサドルと同じ語)馬の鞍用です。ブライドルレザーは手綱用だけあって、より強靭な革となるべく作られています。まさに、馬に乗る人の「命綱」になるのですから、切れてはいけない、というわけです。

見た目だけじゃない、ブルームには存在理由が。

では、どのようにして強くしているのか?
ここで、前述の bloom(ブルーム)が関係してきます。これは、鞣し終わった革に10週間以上かけてオイルや蜜蝋などの成分を染み込ませた結果として、表面に白く浮き上がった成分です。製品として仕上がった革に最後に単なる飾りとして載せたものではありません。染み込んだ成分は革の繊維を引き締めるので、革の堅牢度が増し、これが「命綱」として使用されるほどになるわけです。

(これがタンナーの外観です。質実剛健)

ちなみに、表面の蝋はコーティングのような役割も果たすので、一般的な牛革よりも水に強いとも言われているとはいえ、ここで言う「強さ」とはあくまであらゆる天候の中で、何年も大変な荷重に耐えうるための強さ、ということです。見た目が変わらない、という意味ではありません。昔ながらの自然な製法で作られた革ですので、水分や気温の変化には当然のように反応します。従って、水滴がついて水ぶくれになることもあれば、汗による色落ちも起こり得ます。
ただ、それは革が「生きている」、「自然由来の素材である」、という証ですので、そういったある種の「気難しさ」とも長年かけてお付き合いをお楽しみください。革製品はそうしたプロセスの中で経年変化により、使う人にとって「世界でただ一つの」ものとなり、さらに愛着が増すことになります。それは、使う人と革製品の幸せな関係、と言えます。

ブルームとどう付き合うか。

さて、ブルームの醸し出す重厚感は印象的ですが、濃い色の着衣には白く付着することがあります。気になる場合は、予めブラシ(馬毛)で落とすことをおすすめします。方法としては、
1. 円を描くようにしっかりと磨く
2. ある程度落ちたら、柔らかい布でよく磨く
3. 革表面の白い粉や強い油分が取れて、透明感のある表情になれば作業終了

(動画も投稿したいところです。準備不足で申し訳ございません)

「せっかくブルームの見た目が気に入って購入したのに、落としてしまうなんて!」
と思われる方も少なくないでしょう。
ご安心ください。ブルームは一度落としても、温度や保管方法によってまた浮き出てきます。まさに生きている、呼吸している革なのです。(常に使用して手が触れている場合はブルームはあらわれません)

すなわち、表面に浮き出たブルームを落としても、革の内部に浸透した成分自体は働き続ける、ということでもあります。それによって起こる効果は先程の堅牢度が高くなることにとどまらず、時間が経つにつれて艶が増すこと、また色に深みが出ることが挙げられます。

もう一つ朗報。ブルームを落としてから使用すると、手で触れたときには手油が革の油分と反応して馴染み、革の光沢が増していきます。使うほど微妙に変化していくのが感じられるので、使うことがますます楽しくなり、愛着も増していきます。


(Columbus のブライドルレザー専用クリームは、香久山鞄店でもお求めいただけます。)

ブルームを落として使用開始後、革が乾燥してきたように感じたら、無色のごく少量のクリーム(できればブライドルレザー専用)をまずは柔らかい布によく馴染ませ、表面に円を描くように動かし、塗布してください。ただ、基本的にはブライドルレザーは革自身に既に入っているオイルやワックスの成分で潤っていますので、過度のお手入れは革の風合いを損ねる虞れもあります。
ブルームがついたまま使用する場合は、ブラッシングだけで事足ります。
デリケートな革というよりも、日常的に使い込むことにより魅力を増していく革ということです。末永くご愛用ください。

私もブライドルレザーの何かを入手して、使ってみたくなりました。

鞄工房山本 二見

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 京都大学卒業 ヨーロッパで靴の仕事を12年間経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream