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ランドセル屋さんの革製品ブログ

〈BCトリフォールドウォレット〉は、
ブライドルレザーを主素材として使っているのだ

2019年9月9日

財布・長財布

ある日のことです。

ブライドルレザー君は森の中を歩いていました。最近イギリスから奈良にやってきた彼は、まだ友達がいません。
イギリスにいた時は森を散歩すると美味しいきのこが採れたのに、日本のきのこはどれが毒なんだかもわからないので、うかつに手が出せません。

数ヶ月前に、彼は鞄工房山本のビジネスバッグ・デビューを果たしたわけですが、本体に使用されている自分の面積が小さいことをちょっと不満に思っています。なんだか引き立て役にならされているように感じるのです。

「9月も半ばになろうとしているのになんてここは暑いのだ。パブでもあればギネスを飲んでまったりできるのに」 独りでブツブツ言っていました。

そこへ、かさかさっ、と音がしたと思ったら、黄色い物体が現れたのです。

イングリッシュブライドルレザー meets 鹿革ブックカバー in 奈良

「なんや、びっくりした。他にもこんなとこ散歩してるヤツいてるねんなー」
と、ベタベタの関西弁で話しかけたのは、菜の花色・鹿革ブックカバー(15,000円/税別)君です。

「?」

ブライドルレザー君は、まだ日本語を習い始めたばかりです。ディープな関西弁はハードルが高い。

まごつく様子を見ていた菜の花色・鹿革ブックカバー(15,000円/税別)君は、近頃奈良にも増えてきた外人さんと思い、英語で話しかけてみました。意外と真面目な彼は、将来仕事に役立つように半年ほど前から駅前留学をしています。

「どうしたんですか。なにか困っていますか? 僕は鹿革ブックカバー(15,000円/税別)です」

「僕はイングリッシュブライドルレザーだ」

「え、でも、ブライドルレザーって『ブルーム』ってゆうしーろいのんが付いていますよね。あなたにはそれが見当たらないような気が……」

(ブルームが目立つ状態だとこのように見えます)

「この暑さで目立たなくなっているのだ。 Bloody hell」

駅前留学で英語を教えてくれる先生は皆アメリカンなので、菜の花色・鹿革ブックカバー(15,000円/税別)君はブライドルレザー君の最後の一言の意味がよくわかりません。なんとなく、相手がご機嫌斜めなことはわかりました。

二人は、とくに目的があるわけでもなく並んで歩きはじめました。沼のところに差し掛かった、その時です。

2種類のダークブラウン〈BC トリフォールドウォレット〉

ザバーン、キラキラキラッ

水面が盛り上がったと思うと、絶妙な長さのショートボブの巻き髪のお姉さんが水の中から現れました。水の中に居たのに、ショートボブの高い女子力はキープされています。

ブックカバー君「あ、お姉さん、久しぶり」

丁度5ヶ月ほど前に、菜の花色・鹿革ブックカバー(15,000円/税別)君とこのお姉さんは同じ場所で出会っています。

実は、その時お姉さんは自分のベシャリの未熟さに気づき、それ以来通信講座でトレーニングを重ねてきました。彼女にとって、今日はその成果を試す日なのです。ちょっと緊張しています。

それにしても、この界隈のひとは勉強熱心です。

お姉さん「お久しぶり。(咳払い)もとい。(ブライドルレザー君に向かって)あなたの落としたのは、このダークブラウンのブライドルレザーの〈BCトリフォールドウォレット〉ですか。それとも、このダークブラウンのブライドルレザーの〈BCトリフォールドウォレット〉ですか。」

ブライドルレザー君「僕は何も落としていない」

お姉さん「まあそうゆわんと」

ブックカバー君「このお姉さん、通りすがりの人にやたらと革製品あげたがるみたいやねん。しかもまた、謎解きみたいなことゆってる」

前回、お姉さんの言いなりにならずに走り去った菜の花色・鹿革ブックカバー(15,000円/税別)君。ちょっと面倒くさそうです。

ブライドルレザー君「それは、後から金品を要求するナントカ詐欺じゃないのか。しかし、彼女は今ブライドルレザーと言ったね」

お姉さん「ゆうたわよ。このコンパクトなお財布は、2つともイギリス製ブライドルレザーを主につこてるねん」

ブライドルレザー君「おお、それはいいことだ。もっとよく見せてくれたまえ」
ブライドルレザーをメインにしたお財布ときいて、俄然興味が湧いたようです。

お姉さん「ええで」

ブライドルレザー君「なかなかいいじゃないか。この同じにしか見えない財布の、どちらかを選べというのはどういった趣向かな」

お姉さん「フフッ」

〈BCシリーズ〉トリフォールドウォレット 各27,000円(税別)
色の組み合わせは左から、ボルドー×ダークブラウン、ネイビー×ダークブラウン(内側×外側の表記) (2019年9月9日現在、WEBサイトでは未発売です。鞄工房山本奈良本店でのみご購入いただけます。)

お姉さんはニコニコしながら、2つのお財布を見せている角度を変えました。すると、 内側に明らかに違いが認められます。

ブライドルレザー君「これは気が利いていると言うか、ちょっとひねったアイデアだね。そして何より、イングリッシュブライドルレザーを外側全体に使っているところがいいじゃないか!」

お姉さん「そうやねん。ところで、中もみせたげるわ」

開いたお財布は、中がネイビーまたはボルドーになっています。

ブライドルレザー君「なるほど、中のカードポケットもブライドルレザーか。カードポケットの形もいいな」

お姉さん「フフッ」

お姉さんは、ちょっと得意げです。

ブライドルレザー君はブックカバー君に耳打ちしました。

「せっかくくれるっていうんなら、僕は中がクラレット(注釈)の方をいただこうかな」

ブックカバー君「え、でも他の人が落としたんかもしれへんし、やめといたら?後で自分でええ気しいひんし」

ブライドルレザー君「構わないさ」

そう言って、ブライドルレザー君はお姉さんに向き直りました。

「僕が落としたのは、〈BCトリフォールドウォレット〉のダークブラウン × クラレットだ」

お姉さん「ちょっと、あんた、さっきはなんにも落としてへんってゆってたやんか。嘘は、アカンでー、ホンマに! ほな、私は行くし。オーホホホホッ、ちなみに、これが関西に伝わる伝統芸、〈スカシ〉やでー」

そう叫ぶと、お姉さんはお財布2つをしっかりと持ったまま、キラキラの水しぶきとともに、また沼の底の方に消えていきました。

ブライドルレザー君「Bloody hell!」

ブックカバー君「スカシ、ってそんなんとちゃうんやけどなー」

注釈:クラレットは、ボルドーの英名です。詳しくはこちらをご一読下さい。

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 ヨーロッパで12年間職務を経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream