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ランドセル屋さんの革製品ブログ

柑子色の鹿革ブックカバーと燕と『幸福な王子』

2019年7月27日

ブックカバー

皆様こんにちは。鞄工房山本です。

覚えていらっしゃいますか、この鞄工房山本の革製品ブログで〈ディア文庫〉という企画があったことを。実は今もあるのです!
それは、18色展開の鹿革ブックカバーに、色ごとでふさわしい本を選んで一緒に誰かにプレゼントしませんか、という新しいギフトの形の提案です。
例えば、こんな記事がありました。

まずは、18色の鹿革ブックカバーに一冊ずつ本を選びました。そうすると、書きやすいものから書いてしまうので、難しいのが残ってしまったのです(汗)。あるいは、内容が重すぎるので、読み終わったのに本を選び直さないといけない、とか。
本日どうして急に再開するかと言うと、最近見た光景のせいです。

鞄工房山本奈良本舎の入り口の軒に巣を作っていた燕たちが旅立って、ふとこの物語を思い出しました。

ひな鳥たちも段々大きくなってるなー、なんて思っていたら、最後にはデカすぎてギュウギュウ詰めになっても、巣でひたすらゴハンを待っている姿がユーモラスにも見えました。このあと飛ぶお稽古が始まり、数日間はツバメ軍団がこの本舎のエントランスを牛耳っていました。私達は「すみません、通ります。」と言って通るわけです。で、気づいたらいなくなっていました。ちょっと寂しい。

というわけで、燕が登場するこのお話を思い出しました。

『幸福な王子』オスカー・ワイルド著/ "The Happy Prince" By Oscar Wilde

『幸福な王子』は日本でも有名ですよね。ドラマ『相棒』で自宅の庭にこの物語の王子の銅像を飾っている人の話があったような気が。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:A_Wilde_time_3.jpg
Attribution: Napoleon Sarony [Public domain]

オスカー・ワイルド(1854年10月16日生まれ – 1900年11月30日没)はアイルランド出身の詩人、劇作家。他の代表作に『サロメ』『ドリアン・グレイの肖像』があります。

例のごとく、皆様にご自身で読んでいただきたいのであらすじも書きません!

日本語版では『幸福な王子』というタイトル訳と、『幸福の王子』『しあわせの王子』『しあわせな王子』といった訳があります。わたくしとしては、「な」の方が王子自身が幸福であることがはっきりして、もともとの意図に即している気がします。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Plate_1_of_The_Happy_Prince_and_Other_Tales_(1888).png
Attribution: Crane, Walter, 1845-1915 [Public domain]

王子の左肩に燕が描かれています。燕のあの、タキシードみたいな色柄で甲斐甲斐しくまめまめしくと王子に仕えているところを想像すると、ミニ執事のようで可愛い。

Wikipediaさまによると、この作品は何度もラジオドラマや舞台作品、映像になっています。
そのうち1944年アメリカで作成されたラジオドラマではオーソン・ウェルズがナレーター、王子役がビング・クロスビーだったそうな。すげー。そして、大人っぽい。

2018年に "The Happy Prince"(ルパート・エヴェレット監督)という映画がある、と思ったら作者ワイルドの伝記でした。よく映画になるひとですね。1997年にも "Wilde" っていう伝記映画があったので。スキャンダラスな人生が人の想像力をかき立てるのか。

あっ。こ、これはマズイことに気づきました。2018年の映画 "The Happy Prince" は、日本語タイトルが『さすらいのひと オスカー・ワイルド』……。

短編集に収録されている5つの物語

『幸福な王子』は “The Happy Prince and Other Tales”として1888年に出版されました。5つの物語が収録されています。童話のカテゴリーになっていますが、皮肉も苦さも毒も入っているので大人も楽しめる本です。とくに『非凡な打ち上げ花火』なんて苦さの塊みたいで、私でも胃酸の活動を感じる気がしてしまいます。子どもが読んだらどう思うのでしょうか。

この皮肉のセンス、イギリスっぽいなあ、なんて思っていたのに、彼はアイルランド人なのですから、そんな文化的偏見も結構いい加減なものです。

5つのお話の意外な共通点

5つのお話全てに鳥が登場します。それぞれ大事な役を務めているのがちょっと面白い。

〈幸福な王子 - The Happy Prince〉 には前述の燕。
〈ナイチンゲールとばらの花 - The Nightingale and the Rose〉 にはナイチンゲール(小夜啼鳥 さよなきどり)
〈わがままな巨人 - The Selfish Giant〉 にはヒワ
〈忠実な友だち - The Devoted Friend〉 に再びヒワとカモ
〈非凡な打ち上げ花火 - The Remarkable Rocket〉 はカモとガチョウ

と言った具合。没後100年以上立っても人々の想像力をかき立てる作家の想像力を鳥たちはかき立てたのか?どうかは知りませんが、少なくとも好きなイメージだった気がします。

鳥たちが舞う空の色の補色、柑子色の鹿革ブックカバー。夏の読書にいかがでしょう。(正直なところ、本の内容は全く夏っぽくありません。悪しからず)

鞄工房山本 二見

こちらの本には、今回ご紹介した短編集に4つの短編が加えて収録されています。

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 京都大学卒業 ヨーロッパで靴の仕事を12年間経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream