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ランドセル屋さんの革製品ブログ

鹿革製小銭入れの作り方
~ヘリ返しとキザミと捻引き~

2019年07月03日

小銭入れ

皆様こんにちは、鞄工房山本の晴之です。

L ファスナー長財布、順調に生産が進んでおります! ですがやはり7月中旬ごろまではかかりそう……もうしばらくブログ記事でも読みながらお待ちください! BC シリーズの Web サイトアップももうしばらくお待ちくださいませ!
今回は焦らしに焦らしている鹿革製 L ファスナー小銭入れを作る第一工房の様子をお届け。その作り方をちらっとだけお見せします!

革の断面の仕上げ方

革を裁断し、張り合わせた断面を何も処理せずに置いておくと、毛羽立ってきたり貼り合わせた革が剥がれてきたりしてしまいます。ですので、革の断面の仕上げ方は非常に重要。どんな仕上げ方があるのか、ランドセルや鹿革製品を例に見てみましょう!

コバ塗り

「コバ」とは革の断面のこと。革の断面にニスを塗って仕上げるのが「コバ塗り仕上げ」。革小物の製法でよく使われるコバ塗り仕上げですが、鞄工房山本は珍しく、ランドセルにその方法を採用しています。ただ単にニスを塗るだけでなく、コバを磨いてニスを塗って、コバを磨いてニスを塗って……何度も繰り返すことで美しいコバが表れます。

ヘリ巻き

革のヘリをテープのように革を巻いて補強する「ヘリ巻き仕上げ」。ランドセルではこの製法が一般的です。コバ塗りに比べると手間がかからない製法です。ですがもちろん簡単ではありません!
また、普段使っている中でニスは剥がれてくることがありますが、ヘリ巻きは革を縫い付けているため基本的にめくれることはありません。
ちなみに、鞄工房山本はコバ塗りランドセルのニスが剥がれた場合は塗り直しも承りますよ。

仕上げ方による耐久性にほとんど違いはありません。その違いはズバリデザイン。並べて見るとコバ塗りはスッキリしてかっこいい見た目、ヘリ巻きはプックリして可愛らしい見た目ですね。

鹿革製品の両面ヘリ返し

では鹿革でできた L ファスナー小銭入れの仕上げ方は?

ヘリ巻きと少し似ていますが、テープ型の革を使っていません。張り合わせる表の革を少し大きく裁断し、裏の革のヘリに被せるようにしています。これは「ヘリ返し」とういう製法。鹿革製品は柔らかすぎるため、コバ塗りに向かないのです。

キザミ、またの名を菊寄せ

ところで、まっすぐな部分のヘリを返すのはスムーズにできそうですが、こんな風に角のカーブしている部分はどうしているのでしょうか。

ちょうど紺藍の小銭入れを作っているところだったので、縫い合わせる前の状態を見てみました!

裏返すと……

まっすぐな部分は想像通り。角のカーブしている部分は?

綺麗なカーブになるように、放射状にヒダを刻んでいます! これが「キザミ」という手法。「菊寄せ」という呼び方が一般的なようですが、当工房では「キザミ」と呼んでいます。きれいなヒダをつくるのはなかなか難しく、特に鹿革は他の革に比べて伸縮性があるため、綺麗なキザミを保つのは至難の業です。
名刺入れや財布などのアイテムでは表革と裏革をそれぞれヘリ返した後に張り合わせる「両面ヘリ返し」という製法をとっています。そのため、ヘリ返し部分やキザミ部分は隠れてしまいますが、表から見て直線もカーブも綺麗ならヘリ返しもキザミも綺麗にできているのでご安心ください!

ランドセルの方ではキザミを直接見ていただくことができますよ。

あるとないで大きく違う捻引き

たくさんの革小物をご覧になる中で「これって何?」と気になる点はございませんか。私は鹿革製品をつくり始めて「これって何?」と気になった点がありました。それがこれ!

カードポケットのヘリ返しに沿って引かれた溝が見えますか。小銭入れだけじゃなく、名刺入れや束入れにも。

実はこれ、「捻引き」といいます。漢字は「念」と書くこともあります。纒、絶、練、発の念能力ではございません。
「捻」と呼ばれるコテに熱をもたせて溝を引いていきます。この道具を使います。

熱で革を圧着するのが目的。また、この捻引きがあるとないでは見た目にも大きな違いが。比較対象がないのでわかりにくいですが、捻引きがあることで見た目をぐっと引き締めることができるのです。
この工程もなかなか難しい。パーツごとに捻を引くのですが、熱の高さ、引くスペード、角度、圧着の強さを調整して同じ濃さの捻を引かなければならないのです。熱で溝をつくるため、一度引いてしまうと修正がほとんど効かないシビアな工程です。

今回はほんのちょっとだけですが、小銭入れの作り方をお見せしました! このようにがんばって L ファスナー小銭入れをつくっておりますので、もうしばらくお待ちくださいませ!

鞄工房山本 晴之

筆者プロフィール

名前:晴之

奈良県出身 同志社大学卒業
卒業後は高校教師を5年間勤める
2018年4月に鞄工房山本入社
趣味はウィンドサーフィン、スノーボード
好きな科目は数学