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ランドセル屋さんの革製品ブログ

ユニセックスなブックカバーと一緒にギフトにしたい、
ユニセックスな本『高慢と偏見』

2019年03月15日

ブックカバー

2度あることは3度ある、森のなかでの邂逅:鹿革・生成りブックカバー君の場合

ある日のことです。
生成りブックカバー君(15,000円/税別)は森の中を歩いていました。

え?なんですって?
そんなアホな、ブックカバー(15,000円/税別)が森の中を歩くやなんて?

……歩いていました。

初春の暖かさは、明るい陽の光だけでなく、木々の芽吹きや花の蕾が出番を今か今かと待っている熱気からも来ているようです。湿った土の上を、ヌメ革ゆえに(奈良県宇陀市・藤岡勇吉本店の最高級鹿革の生成り色はベジタブルタンニンなめしです)シミのできやすい性質から気にしながら、何かが起こりそうな、説明のつかないワクワクした気持ちを感じながら歩いていきます。

沼の近くに差し掛かったときです。
突然、沼の水面がざわついたかと思うと、

キラキラキラッ、ザザーッ
水面が光り輝いて、茶髪を巻き髪にした女性が現れました。
水の中に居たにも関わらず、髪はくるくるです。何故か、両手に文庫本を持っています。

女性「貴方が落としたのは、ジェーン・オースティンの 『高慢と偏見』(Pride and Prejudice、1813年)ですか? それとも『分別と多感』(Sense and Sensibility、1811年)ですか?」

生成りブックカバー君「僕、何も落としてませんけど」

女性 「……貴方が落としたのは、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』ですか? それとも『分別と多感』ですか?

どうも今日は、女性に反論しないほうが良さそうです。

生成りブックカバー君「え~と、もう一回ゆってもらっていいですか?」

女性「……貴方は覚えられないのですね。ほな、なんせ、私が一番好きな『高慢と偏見』をあげましょう」

(写真はイメージです。鞄工房山本の鹿革ブックカバーは文庫本サイズ対応です。残念ながら、海外のペーパーバックにはお使いいただけません!)

そう言って本を生成りブックカバー君(15,000円/税別)に渡すと、女性はまた水の中に去っていきました。
何のことやらさっぱりわからない生成りブックカバー君(15,000円/税別)の前には、『高慢と偏見』が。期せずして、探し求めていたパートナーが見つかったのか?!

メトロでの邂逅:私の場合

パリの地下鉄で、4人が向かい合わせになる席に座っていたときのことです。私の前に座っていた老婦人は、パレ・ロワイヤルで降りる様子。さきほどから彼女からの視線を感じてはいたものの、本に夢中だった私は顔をあげていませんでした。古い車内は狭く、奥の席から降りる人がいると、通路側の人はかなり体を捻じ曲げて通してあげます。私も体を左に向けた瞬間、細くて白い、年齢を重ねた上品な手が私の本に伸びてきました。
本を指さしてにっこり笑って曰く、「Beautiful book!」。
2つの単語だけで、イギリス人とわかる発音でした。

その時私が読んでいた本は、Jane Austen の “Pride and Prejudice”。何度も読んだお気に入りです。私もきっと、あの老婦人くらいの年齢になっても時折読み返すのでしょう。
彼女からすると、自分(イギリス人)のお気に入りの(こてこてのイギリスの)本を、言葉の違う国(フランス)で、これまた違う言葉を話しそうなどう見てもアジア人(私)が読んでいる、という情景を面白く感じて思わず話しかけたのかもしれません。

私だって、インドに旅行してムンバイ辺りでド金髪に青い目の白人のお婆さんが着物姿で原著の『徒然草』を読んでいるのに遭遇したら、おったまげます。文枝師匠なら椅子ごと転げ落ちてくれることでしょう、。

こんな本です、『高慢と偏見』

ジェーン・オースティンを読む。少女趣味、とお思いか。女性はいつまでも、ひらひらしたフリルとレースの世界が好き、かどうかは知りませんが、ここに描かれているのは、お飾りのお姫様たちではありません。
女性も職業を持って自分の人生を切り開くようになる時代よりはかなり前。でも、家や名前を切り盛り(?)するのもプロの仕事。その時代は誰と結婚するかで人生の明暗が分れたので(あ、これは、今もある意味同じか……)相手を見極めたり、駆け引きをしたり。
読んでみれば、当時のイギリスの(特定の階級の)風習も、金銭的なことに振り回される事情も描かれており、ユーモラスな場面もあります。

この本は女性向け、と思いきや、意外とこれを読んだことのある男性もいるようです。以前周囲に訊いたことがあるのですが、8人中3人は読んだことがあり、3人共「面白かった」、という感想でした。もちろん、かなり文科系な母集団から抽出された8サンプルでしたが。

それでも、オースティンの小説が映画化されたものを観ると、ひらひら好きを呼び込もうとしているのか、まあまあヒラヒラです。小説はもっとドライで、イギリス的なウィットに富んでいます。

『高慢と偏見』は「鹿革生成りブックカバー(15,000円/税別)」にオススメの本なのです

今回は、新企画の第1回目です。問題は、企画名が決まっていないこと。でも、内容は決まっており、18色のブックカバーそれぞれにちなんだ本をおすすめしてみよう、というものです。
誰かにプレゼントするにも、ブックカバーだけではなく、中に本も入れてあげると、気持ちも余計に伝わるのではないでしょうか。

なんでこの本『高慢と偏見』が「生成り」なのか。
じつは、なんだかんだ言ってもひらひらのレースが好きなので、コットンの生成りです♡フフッ♡
というオチではありません。

しつこいようですが、鞄工房山本で使用している生成りの鹿革(藤岡勇吉本店製)はベジタブルタンニン鞣しです。使い始めのごく薄いベージュ(肌色)が、自然な日焼けや、手脂で色濃く、味わいを増していきます。シミまでも個性の一部になっていきます。
この本の主人公である男女は、 はじめお互いに対して良い印象を持ちません。それが、時間と出来事を通じて相手の良さを見い出して、結ばれます。一緒になってからも、時間の軸を通して人間的に成熟していきそうな2人は、生成りです。
無理やりです!
すみません!

夜になって、王子はお城に帰ってきました。
テーブルの上には、生成りブックカバー君がいます。いつもと違う様子に、すぐ手に取りました。生成りブックカバー君が大事そうに抱えているのは、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』です。

王子「なんやろう、この本。なんやわからへんけど、とりあえず、読んでみるか」

少なくとも4人目の、ジェーン・オースティンを読む男性が生まれようとしています。

鞄工房山本 二見

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 京都大学卒業 ヨーロッパで靴の仕事を12年間経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream