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ランドセル屋さんの革製品ブログ

赤銅色の鹿革ブックカバーにオススメしたい、
三島由紀夫『不道徳教育講座』

2019年3月19日

ブックカバー

皆様こんにちは。鞄工房山本の二見です。
今回まずは、今更ながらこの色のお話から。

赤銅色が好まれる理由

鹿革18色の中でも、赤銅色(しゃくどういろ)は、とくに人気のある色です。レディース、メンズの隔たりなく、好まれます。

この色は、男性が持つとちょっと派手目。オトコオトコしていない。
この色は、女性が持つと結構渋め。オンナオンナしていない。

その「境目」な感じ。一歩間違えるともう「なんか違う」になる危うさを孕んだ絶妙な、オトナ向けのいい色。そんなところでしょうか。

赤銅色の鹿革ブックカバー(15,000円/税別)におすすめしたい本は、三島由紀夫『不道徳教育講座』。

本屋さんで、タイトルに惹かれて衝動的に本を買ったことはありますか。なければ、その昔、レコード屋さんで「ジャケ買い」をしたことは?

この本は、わたくし、ジャケ買いならぬタイ買いをしてしまったのです。タイトル買い。
不道徳教育講座、なんてあの方に名付けられた本なら、読みたくなります。ズルいくらい上手いです。

(フェアでつけられていた帯。内容と絶妙にあっていないところがまた面白い。そういうことって、よくありますよね、映画の予告編のコピーとか)

発表時は、女性向け大衆週刊誌『週刊明星』に連載されました。連載は人気を博し、当時舞台化・映画化・テレビドラマ化されています。
おや、『明星』って……私の子供の頃~10代の頃にあった、アイドルばっかり扱う雑誌では? と思い調べたら、失礼しました、同じ集英社さんでも、『週刊明星』と『明星』は「別系列」だそうな。
そうですよね……。そして、前者は1991年で廃刊になりましたが、後者は今も名前を『Myojo 明星』として刊行を続けています。またまた失礼いたしました。

Wikipedia によると、『週刊明星』の創刊時に「若者に一番人気のある作家」として、三島の『不道徳教育講座』の連載が始まったそうです。
なんちゅうええ時代。羨ましい!私も1958年に生きていたかった! 終戦から13年しか経ってへんから、大変やろうけど。そのかわりきっと super exciting。

はっ。早速脱線しています。

三島はきっと、「作家でタレント活動もする」人種のはしりだったのでしょう。週刊誌で私生活を取り上げられるに留まらず、テレビ出演し、映画俳優としても活動する。
その「チャラい作家」として捉えられている自分の立ち位置を敢えて選んで(演じつつ?)、「反道徳な」教えを垂れて(?)いきます。

さて、この本、まさしくタイトル通りに不道徳、インモラル、道徳に反したことを推奨して……いるのでしょうか。

毎回の題名だけでもクスッと笑ってしまう。電車の中で読みながらニヤニヤを抑えるのに苦労しました。

「知らない男とでも酒場にいくべし」

「ひとに迷惑をかけて死ぬべし」

「スープは音を立てて吸うべし」

「喧嘩の自慢をすべし」

「人の失敗を笑うべし」

「オーイエス」

挑発的な題名が並ぶ、あくまで反語的な講座。オチの優しさが、妙に可愛げがあったりもします。軽妙な語り口や、当時の流行が垣間見えるところもこの本の好きなところです。

[※申し遅れましたが、このブログを読んでくださる方が、こうしてご紹介する本を実際に読むきっかけになると嬉しいので(未読であれば)、内容の詳細には触れないようにしています]

「キャッチフレーズ娘」

これはとくに、60年後(!)の現在に奇妙に合致した内容に思えます。「これはとくに」と敢えて書くのも、「これは変だ」と当時作者が思っていたこと諸々は今もそのまま「変」な現象であり続けているのは、ある意味衝撃的です。問題が解決していないとも言えるし、良く言うと、状況は悪化しているわけでは無い??

三島の小説を読んだことが無い方にも、手始めにぜひお読みいただきたい一冊です。

この洒脱な連載(前編・続編)を終えた3年後に彼は自死します。
風刺や諧謔の裏に見え隠れするデリケートさ、生真面目さを感じたあとでは、それが説明のつかないまま変に腑に落ちつつも、私はどうしても「勿体無い」と思わずにはいられません。

当企画の名前が決定しました。

ところでこの「鹿革ブックカバー (15,000円 税別)に、本を色ごとにオススメしてみよう。インパクトあるギフトになりますよ。」企画(仮)。前回の生成りに続いて2回目です。

私の個人的思い入れとおせっかいによるセレクトなので、王子のお手は煩わさずに一人で担当いたします。
で、その「鹿革ブックカバー(15,000円 税別)をプレゼントする方はぜひ!キレイな色に本も合わせて、更に思いの伝わるギフトにして下さい。」企画(仮)は、前回の時点で正式タイトルが決まっておりませんでした。
いくらなんでもずっと「ヒネリの効いた本を選んで、鹿革ブックカバー(15,000円 税別)と色も合わせてプレゼントしてみよう!」企画(仮)と長々と呼ぶのはちょっと面倒かもしれません。

そこで、会議が開かれました。キラリとセンスの光る提案が多数出され:

しかほんや、としかん、 本シェルジュ・ゲンズブール……

といった手強い対立候補と競い合って、投票の結果僅差で選ばれたのは……

ディア文庫(Deer Library)

です! Oh dear!
引き続き、18色の鹿革ブックカバーに合わせて本を選んで参ります。お楽しみに!

鞄工房山本 二見

筆者プロフィール

名前:二見

大阪府出身 京都大学卒業 ヨーロッパで靴の仕事を12年間経験したのち帰国
バッグメーカーなどを経て2018年8月より現職
好きな文筆家は森鴎外、Albert Camus
好きなミュージシャンは Jimi Hendrix、Cream